本橋成一 在り処(ありか)
2016年2月7日(日)―7月5日(火)
「チェルノブイリ」 チェチェルスク、ベラルーシ共和国 1992年

本橋成一(1940年– )は1960年代から市井の人々の姿を写真と映画という二つの方法で記録してきたドキュメンタリー作家です。写真集『ナージャの村』で第17回土門拳賞、映画「アレクセイと泉」で第12回サンクトペテルブルグ国際映画祭グランプリを受賞するなど国内外で高い評価を受けています。
本橋は炭鉱、大衆芸能、サーカス、屠場、駅など人々の生が息づく場をフィールドとし、社会の基底にある人間の営みの豊かさを写し出してきました。また、チェルノブイリ原発事故の後もかの地で暮らす人々の日々を主題としてこれまで写真集3冊と映画2作品を制作しています。2016年はチェルノブイリの事故からちょうど30年目の節目の年になりますが、被曝した故郷をテーマとした本橋の写真は、3・11を経たわれわれによりいっそう切実なメッセージを投げかけてきます。
本展では、本橋の原点となる未発表の初期作品から代表作を含めた200点以上を展示し、半世紀にもおよぶ写真家としての軌跡をご紹介します。



[代表作品の紹介]
 
炭鉱 〈ヤマ〉   (1964年– ) 
1968年に「炭鉱〈ヤマ〉」で第5回太陽賞を受賞。東京綜合写真専門学校の卒業制作として撮影をはじめ、その後数年間にわたり何度も九州や北海道の採炭地に通い炭鉱住宅の日々を撮影する。
筑豊(福岡)で暮らす記録文学者・上野英信氏との出会いが本格的に写真にのめり込むきっかけとなった。60年代のエネルギー革命で燃料の主役は石炭から石油へ移行し、多くの炭鉱が閉山に追い込まれた。

サーカス  (1976年– ) 
かつてないスピードで街が様変わりした戦後・昭和という時代のなかで「テントという空間のなかに、芸人さんや裏方さんの生活や人生が渦巻いて」いたサーカスは本橋にとって魅力的な被写体だった。最盛期には全国で30団以上あったサーカス団も次々に事業を停止し、現在確認できるのは2団体のみの活動となっている。

上野駅   (1980年– ) 
1985年に東北・上越新幹線が大宮まで延伸される前に「ターミナル駅としての最後の風景」を撮影した作品。かつての上野駅は、東京と東北を結ぶ玄関口として出稼ぎの労働者をはじめとした雑多な人々が行き交い時間を過ごす「広場」であり、人と駅の関係は無数の幕間の物語をうみだしていた。かつては人の手で行っていた列車運行案内も現在は電動式列車案内板に変わっている。
鞍手、福岡 1965年
関根サーカス 沼津、静岡 1976年   上野駅、東京 1981年

屠場 〈とば〉   (1986年– )
大阪・松原市の新旧屠畜場で働く人々の記録。昔からの手法で牛を屠畜・解体加工していた1980年代から撮影を始めた。現在はほとんどの作業が機械化されている食肉加工の屠畜場もかつては多くの工程が熟練の職人技の世界だった。屠畜場での労働を1冊にまとめた日本初の写真集『屠場』が刊行されたのは2011年。日本では差別視されてきた職場としての背景ということもあり、カメラが入ることは少なかった。    
※大阪では屠場を「とば」と読む。

藝能東西  (1972年– )
雑誌『太陽』における故小沢昭一氏の連載「諸國藝能旅鞄」のために撮影を開始。その4年後からは、小沢氏自身による発行の季刊誌『藝能東西』で発表が続いた。キャバレー、チンドン屋、寄席芸人、大衆演劇、伊勢大神楽、本川神楽、河内音頭とにわか、紙芝居、小人プロレス、秋田万歳……かつて伝統や娯楽をになっていた「芸能」は現在人々の生活や娯楽の形態とともに変容しているものも多く、失われつつある大衆文化の記録という側面をもつシリーズ。

チェルノブイリ  (1991年–)
旧ソビエト連邦(現ウクライナ)にあったチェルノブイリ原子力発電所で1986年4月26日、人類史上未曾有の大事故が起きた。本橋は5年後の1991年、日本チェルノブイリ連帯基金からの誘いがきっかけで初めてチェルノブイリの原発とその周辺地域を撮影した。その後30回以上その地に通い、被災地ベラルーシの汚染地域で愛しい故郷を離れず暮らす村民を記録し続ける。これまでに3冊の写真集『無限抱擁』『ナージャの村』『アレクセイと泉』と2作品の映画「ナージャの村」「アレクセイと泉」を完成させた。


◎上記以外の展示作品シリーズ
・初期作品:「 雄冬」(1963年–) ※未発表作品を含む
・初期作品:「与論」(1964年–) ※未発表・初公開作品
・最新作品:「アラヤシキ」(2011年– )



松原、大阪 1986年
浪花三之助劇団 神戸、兵庫 1973年
ドゥヂチ村、ベラルーシ共和国 1996年

[略歴]
本橋成一(もとはし・せいいち)
写真家・映画監督 1940年東京生まれ。63年自由学園卒業。65年東京綜合写真専門学校卒業。68年「 炭鉱〈ヤマ〉 」で第5回太陽賞受賞。95年『無限抱擁』で日本写真協会賞年度賞、写真の会賞を受賞。98年「ナージャの村」で第17回土門拳賞受賞。
ドキュメンタリー映画 「ナージャの村」(1997)、「アレクセイと泉」(2002)、「ナミイと唄えば」(2006)、「バオバブの記憶」(2009)を監督、「水になった村」「祝の島」「ある精肉店のはなし」をプロデュース。2015年に最新監督作「アラヤシキの住人たち」を公開した。
主な個展に「本橋成一 ナジェージダ–希望」東京都写真美術(2002)、「本橋成一 写真・映像展:ナジェージダ–希望」松本市美術館(2006)など。主な写真集に『ナージャの村』(平凡社、1998)、『アレクセイと泉』(小学館、2002)、『屠場』(平凡社、2011)、『上野駅の幕間』(新版、平凡社、2012)、『サーカスの時間』(新版、河出書房新社、2013)、『炭鉱〈ヤマ〉 』(新版、海鳥社、2015)などがある。

[関連イベント]

◎トークイベント
関野吉晴(探検家・医師・武蔵野美術大学教授/人類学)
× 本橋成一

日時:2月14日(日)14 : 30 – 16 : 00 *終了しました。
会場:クレマチスの丘ホール(美術館より徒歩2分)
料金:無料(当日有効の観覧券が必要です)
定員:150名・先着順
参加方法:お電話にてお申し込みください。Tel. 055-989-8780




◎作家によるギャラリートーク
日時:3月27日(日)、5月15日(日)*終了しました。
   11:15 – / 14:15 –(約45分間)
料金:無料(当日有効の観覧券が必要です)
申し込み不要(当日美術館受付カウンターの前にお集まりください)



◎学芸員によるギャラリートーク
日時:2月28日(日)、4月24日(日)、6月26日(日)/ 14 : 15 –  ( 約30分間) *終了しました。
料金:無料(当日有効の観覧券が必要です)
申し込み不要(当日美術館受付カウンターの前にお集まりください)



◎本橋成一監督映画作品の上映&トークイベント
展覧会との関連が深い本橋成一監督映画3作品の上映会です
〜30年目のチェルノブイリ〜
・4月3日(日)「ナージャの村」「アレクセイと泉」(トークゲスト:平松洋子/エッセイスト)*終了しました。
・5月15日(日)「アラヤシキの住人たち」*終了しました。
・6月12日(日)「ナージャの村」「アレクセイと泉」(トークゲスト:小室等/ミュージシャン) *終了しました。
〜最新作〜

スケジュール・参加方法等詳細はこちらより
関野吉晴 公式サイト
「チェルノブイリ」 ボロソビッチ村、
ベラルーシ共和国 1996年
映画「アレクセイと泉」(2002年)

[関連書籍情報]
・『本橋成一 在り処』刊行
◎5月20日(金)午後よりPHOTO MUSEUMにて先行販売いたします。
展示作品にさらに10点余を増補、本橋成一の9シリーズ、計262点を
収録した決定版写真集。
B5判、ソフトカバー、348頁
発行:IZU PHOTO MUSEUM
発売:NOHARA
定価:本体3,000円+税

・本橋成一写真集『無限抱擁』(新版)
 4月14日よりミュージアムショップにて先行販売。


 発行 青林堂書店
 販売 西田書店
 定価 3,400円+税
 ISBN978-4-88866-603-9
 136頁 A4変型版